こぶしの上のダルマ
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人生の関所を通り過ぎたいま、苛烈な思い出と和解を果たす。どこからきてどこへ消えたのかもわからないままのおばさんも、折り合いの悪いまま逝ってしまった父親も、故郷の廃屋に茂る夏草さえ、いまはただ愛おしい。医者であり小説家である著者が、魂の再生を静かに描いて、深い感動を呼ぶ八篇の連作小説集。
人生の関所を通り過ぎたいま、苛烈な思い出と和解を果たす。どこからきてどこへ消えたのかもわからないままのおばさんも、折り合いの悪いまま逝ってしまった父親も、故郷の廃屋に茂る夏草さえ、いまはただ愛おしい。医者であり小説家である著者が、魂の再生を静かに描いて、深い感動を呼ぶ八篇の連作小説集。
生まれ故郷にみずから墓を作り、苦しまずに死ぬことを願う末期癌患者。家族との妥協を拒み、患者本人との契約によって、初めて尊厳死に臨もうとする医者。その葛藤を克明に描いた表題作と、難民医療団に加わって過酷な日々を送る人々の、束の間の休日に起こった出来事を、安吾の『堕落論』に仮託して描いた中篇とを収める。